事業報告
1. 企業集団の事業の概要

当社および連結子会社296社の連結業績は、増収増益となりました。営業収益は過去最高となる8兆2,101億円(前期比100.4%)、営業利益は1,847億円(同104.4%)、経常利益は1,873億円(同104.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期と比較し52億円増の112億円(同187.3%)となり、大幅な増益になりました。当社を取り巻く経営環境は、国内景気が緩やかに持ち直しつつある中、家計における消費者マインドの改善は限定されており、実質的な消費支出は、天候不順の影響やインバウンド需要の頭打ちなど足踏みが見られました。また、世界経済の成長率は先進国を中心に低下傾向となっており、先行きは不透明なものとなりました。
このような環境の中、当社は絶えず革新し続ける企業集団として、グループ各事業・企業がそれぞれの業界・地域でナンバーワンへと成長し、その競争力ある事業・企業が有機的に結合することで高いシナジーを創出する企業グループへ進化するべくイオングループ中期経営計画(2014~2016年度)を推進しました。その結果、最終年度となる当期は、連結営業収益が2013年度比128.4%と伸長するとともに、セグメント別営業利益では、8事業中6事業(SM・DS事業、総合金融事業、ドラッグ・ファーマシー事業、サービス・専門店事業、小型店事業、ディベロッパー事業)が増益となり、連結業績に寄与しました。
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グループ共通戦略の推進
・2016年6月にお客さまの健康生活を応援し地域社会の基盤となる新たな共通ポイントを目指して「WAON POINT」サービスを開始しました。
・新たな成長市場の開拓に向けて新会社「イオンサヴール株式会社」を設立し、フランスナンバーワンの冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」を日本で初めて展開、都内に3店舗を出店しました。
さらに、お客さまの健康志向の高まりを受け、オーガニック市場の開拓に向けて、フランスを基点に欧州にてオーガニック小型SM「Bio c’ Bon(ビオセボン)」を展開するMarne & Finance Europe社と合弁会社「ビオセボン・ジャポン株式会社」を設立し、2016年12月、オーガニック小型SM1号店を出店しました。
・アセアン市場のさらなる開拓に向けて、2016年8月、成長を続けるミャンマー市場にてSM事業や専門店事業、不動産事業等を営むミャンマーのCreation Myanmar Group of Companies Limited(CMGC社)と合弁会社「イオンオレンジ株式会社(AEON Orange Co.,Ltd.)」を設立し、傘下のSM14店舗を譲り受けて事業を開始しました。同年9月には、合弁会社による1号店を最大都市のヤンゴン市に出店しました。
・商品本位の改革では、特定の添加物や原材料に配慮したトップバリュ グリーンアイフリーフロム商品や、食物アレルギーに配慮し、特定原材料7品目を使用しないトップバリュ「やさしごはん」シリーズを発売するなど、お客さまの健康志向の高まりに対応しヘルス&ウエルネスの具現化を推進しました。
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■連結営業成績および財産の状況の推移

■事業の種類別セグメントの状況

環境・社会への取り組み
当社は、「グループの成長」と「社会の発展」を両立させる「サステナブル経営」を追求しています。重点課題である「低炭素社会の実現」「生物多様性の保全」「資源の有効利用」「社会的課題への対応」を柱に、2020年に向けた目標「ビッグチャレンジ2020」に取り組んでいます。
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持続可能な社会の実現に向けて
・「低炭素社会の実現」では、「イオンのecoプロジェクト」で掲げる、エネルギー使用量の削減・効率化等の「へらす」、再生可能エネルギー創出等の「つくる」、非常時に防災拠点として地域を「まもる」施策に取り組んでいます。当期は、持続可能な物流体系の構築に向けた「トレーラーの中継輸送」の取り組みが、経済産業省の定める「グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰」において「経済産業大臣表彰」を受賞、昨年のモーダルシフトに続き2年連続の受賞となりました。
・「生物多様性の保全」では、「イオン持続可能な調達原則」のもと、「イオン水産物調達方針」「イオン森林資源調達方針」を制定し、水産資源については、責任ある養殖により生産されたASC認証商品や持続可能な漁業で獲られた天然水産物MSC認証商品の開発に取り組んでおり、GMS51店舗では、認証商品で構成された売場「フィッシュバトン」を展開しています。
・地域のお客さま、公益財団法人イオン環境財団とともに取り組む植樹活動は、累計植樹本数が約1,140万本を超え、2016年にイオンの植樹25周年を迎えたことを機に「植える」「育てる」「活かす」をテーマにした「イオン 森の循環プログラム」をより一層推進しました。適切に管理された森から生産されたFSC®認証商品の販売や、建設資材として利用した店舗の拡大を図りました。
・公益財団法人イオン環境財団は、イオンの基本理念に基づき、美しい地球を次代に引き継ぐための環境保全活動に積極的に取り組んでおり、世界各地の環境活動に取り組む団体への助成や国内外での植樹を行っています。また、カナダに本部を置く国連環境計画・生物多様性事務局をはじめ世界各国の政府や研究機関等と連携し環境活動を推進しています。さらに、アジア各国の主要大学との連携では、環境分野の人材育成に向けた環境教育を国内外で実施するなど、環境活動を通じ豊かな暮らしを実現できる「自然共生社会」の構築を目指して取り組んでいます。
・「資源の有効利用」については、「イオンの『廃棄物ゼロ』取り組みコンセプト」を定め、イオン完結型食品リサイクルループを完成する等、店舗・お客さま・地域とともに資源循環型社会の構築に取り組みました。
・「社会的課題への対応」については、日本各地の自治体と双方の資源を有効活用した協働による活動を推進し、地域の一層の活性化と住民サービスの向上に資するべく包括協定の締結を進めています。2017年2月末現在の締結数は1道2府41県16政令市40市区になりました。
・地域の皆さまや行政、企業等の様々なメンバーと一体となった地域発展の新しい枠組み「地域エコシステム」の取り組みでは、2016年11月より千葉市の一部地域で「移動販売車」の運行を開始するとともに、同地域の警察署と「地域の安全確保に関する協定」を締結するなど、お買物支援だけでなく、安全で安心な地域社会の実現を目指しています。
・お客さまとともに地域のボランティア団体を応援する「イオン 幸せの黄色いレシートキャンペーン」では、延べ約2万5千団体に総額3億3千万円相当の品物を寄贈しました。イオンの電子マネー「WAON」においては、ご利用金額の一部を地域社会の発展にご活用いただく「ご当地WAON」が126種類となり、2009年からの寄付金額は累計9億8千万円となりました。
・「次代を担う青少年の健全な育成」「諸外国との友好親善の促進」「地域社会の持続的発展」を事業の柱に、社会貢献活動を行う公益財団法人イオンワンパーセントクラブは、新たに「福島キッズ森もりプロジェクト」「アジア障がい者支援募金」の活動を開始したほか、「学校建設支援」等様々な活動を実施しました。グループ主要企業は、同財団の活動を支援するため税引前利益の1%を拠出しており、1989年からの累計拠出金額は約230億円となりました。
・このようなイオンならではの環境・社会への取り組みが評価され、2017年3月、株式会社日本政策投資銀行が実施する「DBJ環境格付」において、環境への配慮に対する取り組みが特に先進的という最高ランクの格付を取得し、格付評価が傑出して高いモデル企業のみが該当する特別表彰を小売業で初めて受賞しました。
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被災地支援の活動
・2016年3月より「にぎわい東北-つなげよう、ふるさとのチカラ」という新たな決意のもと、「地域(ふるさと)の創生」に向けて、「事業を通じた地域産業の活性化」「雇用の創出と働きやすい環境づくり」「地域の未来を“ともにつくる”環境・社会貢献活動」「安全・安心にくらせるまちづくり」の4つの方針のもと、東北創生の輪を広げています。10年間にわたる復興支援に労使一体で取り組む「イオン 心をつなぐプロジェクト」では、累計20万2千本の植樹や、延べ23万7千人の従業員によるボランティア活動の参加といったグループ一体の活動に加え、2016年より交流を通じて地域課題の解決に貢献する「イオン 未来共創プログラム」を開始しました。
・2016年4月に発生した熊本地震においては、被災地の復旧・復興に向けて、各自治体との包括協定に基づき約530万個の緊急支援物資を迅速に提供したほか、WAONポイント募金や「熊本・大分復興支援イオン黄色いレシートキャンペーン」による寄付金および当社支援金等の合計6億9百万円の寄付、移動販売車の買物困難地域への展開等の支援活動を推進しました。
・災害発生時の事業継続体制構築に向けた取り組みでは、「イオングループBCM(事業継続マネジメント)5カ年計画」を策定し、「情報システム」「施設」「商品・物流」「訓練」「外部連携」の5分野の事業継続計画がより有効に機能するべくPDCAサイクルの早期確立に向け2016年3月より「イオンBCMプロジェクト」を始動しました。
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人材の活躍・ダイバーシティの推進
当社は「コーポレートガバナンス基本方針」において、お客さまに対する価値創造を担う従業員を最大の経営資源と位置付け、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、多様な価値観を活かした革新ある経営を実践するため、グループをあげてダイバーシティ経営を推進しています。グループ内ダイバーシティ表彰制度“ダイ満足”アワードによるベストプラクティスの共有や、管理職の意識改革の推進、グループの事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」の設置拡大等に取り組みました。このような取り組みが評価され、女性活躍推進に関する取り組みが優良な事業主に対して厚生労働大臣から与えられる「えるぼし」最高位の3段階目と、従業員の仕事と家庭の両立支援の取り組みが優良な企業に与えられる「プラチナくるみん」の認定を取得しました。
また、LGBT(性的マイノリティ)に関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する任意団体work with Prideが策定するLGBTに関する取り組みを評価するPRIDE指標で「シルバー」を受賞しました。
さらに、従業員の健康づくりが企業活動の要であるという考えのもと推進する健康経営が評価され、当期は、経済産業省と日本健康会議が共同で優良な健康経営を実践する企業を顕彰する「健康経営優良法人(ホワイト500)」制度の初年度認定を受けました。詳細を見る閉じる
2. 企業集団の対処すべき課題
近年、お客さまのライフスタイルや価値観は、情報やテクノロジー・技術革新がもたらす快適さや便利さによって大きく変化し、加速度的に多様化が進んでいます。そして、この大きく変化する社会的な潮流への対応を、技術革新やデジタル化によっていち早く推進する企業がより高い成長を実現しています。
このような環境の中、当社グループは、“絶えず革新し続ける企業集団”として、既存の事業モデルの革新を図るとともに、新しい成長モデルを確立し、グループ各社がそれぞれの分野・地域でナンバーワンへと成長することで、持続的な成長と収益性の向上を実現してまいります。
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(1)グループ事業構造の改革
これまで当社が培ってきた多様な事業ポートフォリオについて、それぞれがより高い収益性を発揮するべく、環境変化に適合する体制へ革新するとともに、新たな成長分野での事業拡大を図ります。
GMS事業、SM事業を中核とする小売事業は、コスト構造の改革を進めることで生産性および成長性を高めます。食品分野については、地域を軸とした体制の強化を進め、衣料や住居余暇、H&BC(ヘルス&ビューティーケア)といった商品分野については、より一層の専門性の向上を目指した改革を進めます。
また、グループ共通で取り組む「アジア」「都市」「シニア」「デジタル」の4つの成長領域へのシフトを通じ、シニア向け「G.Gストア」の開発や都市在住のお客さまの利便性を高める小型店開発などお客さまニーズにお応えする業態への革新と収益成長の両立を実現してまいります。さらに、家計におけるサービス支出の拡大を捉え、サービス分野・市場での取り組み、あるいはサービスと物販との組み合わせにより、同分野における収益拡大を推進します。あわせて、グループ企業間の事業領域および機能の重複並びに分散の解消・整理を進め、グループの生産性および効率性を高めます。詳細を見る閉じる -
(2)事業基盤の刷新
現在、プライベートブランドや、物流、ITといった事業基盤は、競合他社との差別化およびコスト競争力の源泉となっています。当社は、将来の企業競争力の根幹となるこれらの事業基盤の刷新を図ってまいります。プライベートブランドでは、お客さまのニーズを先取りし、新しい価値を持つ商品の開発を進め、需要を創造することで、グループの営業力とコスト競争力をより一層高めます。また、物流、商品企画・開発、営業活動等の経営・事業活動における生産性並びに効率性を高めるためIT基盤の刷新を進めます。
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(3)組織体制の改革
各分野・各地域におけるナンバーワン企業から成る真のナンバーワングループを実現するため、組織体制の改革を行います。事業並びに現場力を強化するため、経営資源を事業・地域へ再配分し、当社は純粋持株会社として、グループ横断的な経営機能への特化を図ります。また、改革を推進する事業担当には、執行役を配置し、明確な責任体制のもと、改革・成長戦略を加速してまいります。
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数字でみるイオン
イオンは、強い競争力を有する小売、金融、ディベロッパー、サービス等、グループ各事業・企業が有機的に結びつき、高いシナジーを創出する総合グループへの進化を目指し、革新に挑戦し続けています。



- 日本・中国・アセアン13カ国で2万店舗を展開しています。

3. 会社の体制および方針
当社のコーポレートガバナンスの基本的な考え方と体制およびその実施状況
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① コーポレートガバナンスの基本的な考え方
イオンは「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念を全ての企業活動の指針とした経営を追求してきました。
このような価値観に基づき、当社のコーポレートガバナンスのあり方を、以下の5つの基本姿勢を中核とした「コーポレートガバナンス基本方針」として定めています。- iお客さま基点、現場主義による価値創造
お客さまの幸福感の実現を最大の企業使命として、お客さまとの接点である現場主義を貫き、常にお客さま基点で考えることで、変化するお客さまのニーズに対応した最適な価値創造を追求します。 - ii最大の経営資源である人間の尊重
人間こそが最大の経営資源であるとの信念に基づき、従業員を尊重し、多様性を重視し、教育機会を積極的に提供することで従業員が自己成長に努め、強い絆で結ばれ、お客さまへの貢献を至上の喜びとする従業員で構成された企業を目指します。 - iii地域社会とともに発展する姿勢
地域社会の一員、心を持った企業市民として、同じ地域社会の参加者であるお客さま、従業員、株主、取引先とともに発展し、地域社会の豊かさ、自然環境の持続性、平和に貢献することを目指します。 - iv長期的な視野と絶えざる革新に基づく持続的な成長
お客さま、地域社会の期待に応え続けるために、変化する経営環境に対応するための絶えざる革新に挑戦することで、長期的な視野に立った価値創造を伴う持続的な成長と、グループ全体の継続的な価値向上を志向する経営に努めます。 - v透明性があり、規律ある経営の追求
お客さま、ステークホルダーとの積極的な対話に努め、評価を真摯に受け止め、常に自らを律することで、透明性と規律がある経営を追求します。
詳細を見る閉じる - iお客さま基点、現場主義による価値創造
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② 企業統治体制
当社は、「グループ全体を視野に入れた基本理念に基づく経営」「透明かつ持続性と安定性を持った経営」「お客さまを原点とした絶えざる革新」を追求し、これらを実践するための最適な企業統治体制として、指名委員会等設置会社を選択しています。
これにより、経営の監督と業務執行を分離して、執行役に大幅な権限移譲を行い迅速な経営の意思決定を実現する体制を整える一方、社外取締役を過半数とする指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3委員会を設置して、経営の透明性と客観性を担保しています。
また、純粋持株会社としてグループの事業や個社の枠組みを越え、グループが目指すべき経営方針の策定や、経営資源配分の最適化、事業を越えたシナジーの創出に取り組んでいます。詳細を見る閉じる -
③ 取締役会および委員会の実施状況
配当金について
当期の剰余金の期末配当は、2017年4月12日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当15円とさせていただきました。
これにより、中間配当15円と合わせた当期の年間配当金は1株当たり30円となります。
なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は、2017年5月1日(月曜日)とさせていただきました。
■年間配当金の推移(1株当たり)

連結計算書類
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